与うれば 空(くう)となりぬる 我れもそも 空しきが故 盈つる功徳ぞ
照滴013
本文
与うれば 空(くう)となりぬる 我れもそも 空しきが故 盈つる功徳ぞ
形式
#短歌
カテゴリ
#7.覚悟・布施・捨身
ラベル
#布施 #空 #精神
キーワード
#与える #空 #功徳 #放棄 #宗教哲学
要点
布施や与える行為は、何かを失うことではなく、自己を空にすることで功徳が満ちることを示す。
現代語訳
何かを与えれば、自分は空になる。空しいからこそ、功徳が満ちるのだ。
注釈
空(くう):無我・無執着の状態
空しきが故::執着がないからこそ、あるいは元々実体がない(空である)からこそ。
盈つる功徳:布施や徳行の効果(福徳)が満ちること
解説
布施の行為が自己の空(無我)を通じて功徳に結びつくことを示す。仏教的実践と哲学を反映した短歌。
深掘り_嵯峨
布施(ほどこし)の真理を説いた、大乗仏教の核心に触れる歌です。
布施の行為は、「与えた」という執着や、見返りを求める心がなくなって「空」となったとき、初めて「真の功徳」として「盈ちる」(満たされる)という逆説的な真理を表現しています。
これは、「求める」ことから「与える」ことへと価値観を転換し、さらに「与えた」という行為の執着さえも捨てるという、空の哲学に基づいた究極の無私を謳い上げています。